補中益気湯の処方解説

補中益気湯(ほちゅうえっきとう)は代表的な補剤(体の働きを補う薬)で、脾虚がある気虚に対して使われる漢方薬です。

脾虚と気虚

脾虚は消化機能が低下した状態で、食欲不振、消化不良、下痢、腹部膨満感などの症状がみられます。気虚は生体エネルギーが低下した状態で、脾虚の症状に加えて風邪をひきやすい、食後眠くなる、疲れやすいなどの症状がみられます。

しかし、食後眠くなる人が全員気虚というわけではないですし、水毒(体に水がたまった状態)気逆(気の逆流)の人でも疲れやすいといった所見がみられるので、しっかりと鑑別する必要があります。

気虚の人は、力なく歩いていたり、遠くから見てもだるそう、という具合に見た目でわかることが多いです。

補中益気湯の構成生薬

補中益気湯の構成生薬は、黄耆(おうぎ)、人参(にんじん)、柴胡(さいこ)、升麻(しょうま)、蒼朮(そうじゅつ)、甘草(かんぞう)、生姜(しょうきょう)、陳皮(ちんぴ)、当帰(とうき)、大棗(たいそう)です。

黄耆と人参には滋養強壮作用があります。

柴胡には胸脇苦満を和らげる作用や抗ストレス作用があります。

升麻には気分の落ち込みを改善する作用があります。

蒼朮、甘草、生姜には胃の働きを良くする作用があります。

陳皮には解熱、鎮咳、健胃作用があります。

当帰には血行改善や乾燥を改善する作用があります。

大棗には精神安定作用や胃腸の調子を整える作用があります。

補中益気湯の適応

病気になったり、手術などのような大きな侵襲が加わってだるい時などに使います。

また、虚証気味の人で、食欲不振、物の味がしない、微熱が時々ある、全身倦怠感や活気がなく、うつ傾向、胃の調子が悪い、といった症状を伴う長引いた風邪に用いられます。

補中益気湯に含まれる升麻(しょうま)には昇提(しょうてい)作用があり、胃下垂、子宮下垂、膀胱下垂などの下垂症状にも使います。

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