漢方薬を構成する生薬には、重大な副作用があるものがあります。今回は、特に副作用に注意が必要な生薬のうち、甘草と大黄について書いていきます。
甘草
甘草に含まれるグリチルリチンには、尿細管でカリウムの排泄を促進する作用があります。そのため、低カリウム血症、ミオパシー、偽アルドステロン症などの副作用が起こる可能性があります。
ミオパシーは筋肉が侵される病気のことで、脱力感や四肢麻痺などの症状がみられます。
偽アルドステロン症は低カリウム血症によって引き起こされ、血圧上昇や浮腫などの症状がみられます。
甘草は半数以上の漢方薬に含まれているので、複数の漢方薬を併用する場合は甘草の摂取量が多くなって副作用が起こりやすくなります。
1日の甘草摂取量の目安は2.5gですが、それより少ない量でも副作用が起こることがあります。例えば、葛根湯には1日量として4gの甘草が含まれています。
また、カリウム排泄性の利尿薬や副腎皮質ホルモン製剤と併用すると、お互いに血中カリウムを排泄してしまうため、副作用が起こりやすくなります。
大黄
大黄はセンノシドやアントラキノン類の瀉下成分を含む生薬です。大黄を長期服用すると、副作用として大腸メラノーシスが引き起こされる可能性があります。
大腸メラノーシスは腸管壁にメラニン色素が沈着する病気で、腸管の蠕動運動が低下して便秘が悪化します。大黄を含む薬を連用中に便秘の増悪がみられた場合は、大腸メラノーシスや大腸癌の可能性が考えられます。
大黄に含まれるアントラキノン類は、母乳中に移行しやすいので乳児が下痢をすることがあります。また、アントラキノン類の影響で尿の色が赤っぽくなることがありますが、大黄によるものであれば問題はありません。