漢方において病態を把握するための指標に、六病位(ろくびょうい)という概念があります。これは、風邪などの急性熱性疾患における進行のステージを分類したもので、3つの陽と3つの陰からなるので三陰三陽(さんいんさんよう)ともいわれます。
陽
風邪における陽は「悪寒があるけど熱がある」、「顔面紅潮」などの症状がみられ、子供がかかる風邪のイメージです。
陽には、太陽病(たいようびょう)、少陽病(しょうようびょう)、陽明病(ようめいびょう)があります。
太陽病
風邪は昔は原因がわからなかったので、邪気と表されていました。太陽病は、この邪気が体の免疫のバリアである衛気(えき)を突破して体内に侵入して、表で闘病反応が起こっている段階を指します。表は、皮膚、筋肉、関節、頭、鼻といった体の表面付近を表しますので、太陽病の症状としては悪寒、筋肉痛、関節痛、頭痛、くしゃみなどの表証という症状がみられます。このときの代表的な処方は葛根湯です。
少陽病
少陽病は、邪気が半表半裏にまで到達して闘病反応が起こっている段階を指し、表証に加えて裏の症状が出現し始める段階です。少陽病の症状としては口が苦い、口が粘つく、食べ物がまずく感じる、食欲不振、嘔気などがみられます。このときの代表的な処方は小柴胡湯(しょうさいことう)です。
陽明病
陽明病は、邪気が裏にまで到達して闘病反応が起こっている段階を指します。陽明病の症状としては便秘、腹部膨満感、口渇、精神症状などがみられます。
陰
陰は「熱がなく悪寒がある」、「顔面蒼白」などの症状がみられ、高齢者がひく風邪のイメージです。風邪のひき始めが陰の場合は、一般的に麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)を使用します。
陰には、太陰病(たいいんびょう)、少陰病(しょういんびょう)、厥陰病(けついんびょう)があります。
太陰病
太陰病は、主に消化管の機能が低下し、気力体力も低下した段階を指します。太陰病の症状としては、下痢、腹痛、倦怠感、食欲不振などがあります。
少陰病
少陰病は、様々な臓器の機能が低下して体が冷えた段階を指します。少陰病の症状としては、強い倦怠感、手足の冷え、未消化便の下痢などがあります。
厥陰病
厥陰病は、体の中心部まで冷えた段階を指します。厥陰病の症状としては、呼吸困難、意識レベルの低下などがあります。
それぞれのステージは移り変わるので、そのステージ毎に適切な治療を行う必要があります。