漢方薬の加減方と合方

漢方薬を使うときは、患者さんの症状や体質に応じて漢方薬の構成を変更する場合があります。漢方薬の構成を変更する方法には加減方(かげんほう)と合方(ごうほう)があります。

今回は、加減方と合方について書いていきます。

加減方

既存の漢方薬に生薬を追加したり、減らしたりすることを加減方といいます。加える場合を加方(かほう)減らす場合を減方(げんぽう)といいます。

生薬を加方し、それが新たな漢方薬になることもあります。例えば、抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)は、既存の漢方薬である抑肝散(よくかんさん)に陳皮(ちんぴ)と半夏(はんげ)を加えた漢方薬です。

合方

2つ以上の漢方薬を合わせることを合方といいます。合方する際、それぞれの漢方薬に共通する構成生薬がある場合は、足さずに多い方の量に合わせるというルールがあります。そのため、構成される生薬の量は、必ずしもそれぞれの漢方薬に含まれる各生薬の総和にはなりません。これは、共通する生薬が過多にならないようにするためのルールです。

例えば、桂枝湯(けいしとう)と麻黄湯(まおうとう)には、桂皮(けいひ)がそれぞれの漢方薬に4gずつ含まれていて、甘草(かんぞう)が桂枝湯には2g、麻黄湯には1.5g含まれています。この桂枝湯と麻黄湯を合方する場合は、桂皮は4g甘草は多い方の2gになるようにします。

また、既存の漢方薬を合方して、それが新たな漢方薬になることもあります。例えば、柴苓湯(さいれいとう)は、五苓散(ごれいさん)と小柴胡湯(しょうさいことう)を合方したもので、柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)は、桂枝湯と小柴胡湯を合方したものです。

合方と併用の違い

エキス剤を使用し構成生薬の量を変更することができない場合は、それぞれの漢方薬を併用します。この場合は、合方するときとは異なり、共通する生薬の量が多くなることがあります。先ほどの桂枝湯と麻黄湯を併用した場合は、桂皮は8gとなり、甘草は3.5gとなります。

このように漢方薬を合方でなく併用する場合は、生薬を多く摂取してしまう可能性があるので、副作用の発現により注意しなければいけません。特に甘草は、ほとんどの漢方薬に含まれているので、複数の漢方薬を併用すると甘草が過剰になりやすくなります。

甘草の代表的な副作用には偽アルドステロン症があります。偽アルドステロン症になると血圧上昇、むくみ、低カリウム血症になったりします。そのため、甘草の量としてなるべく1日に5gを超えないようにします。

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