生薬の性質を薬性、味を薬味といいます。これら薬性や薬味は、生薬の薬効と深い関係があります。
今回は、薬性と薬味によるそれぞれの分類についてみていきます。
薬性による生薬の分類
薬性は、熱を冷ます生薬と、冷えを温める生薬があるという点から分類したもので、①寒(かん)、②涼(りょう)、③温(おん)、④熱(ねつ)、⑤平(へい)に分類されます。この分類法は四気(五性)といわれます。
①寒
寒に属する生薬には、黄蓮(おうれん)、石膏(せっこう)、大黄(だいおう)などがあります。これらの生薬は、体内の熱を冷ます作用(=消炎作用や解熱作用)があります。
②涼
涼は寒よりも作用が弱く、涼に該当する生薬には、薄荷(はっか)や柴胡(さいこ)などがあります。
③熱
熱に属する生薬には、乾姜(かんきょう)、附子(ぶし)、呉茱萸(ごしゅゆ)などがあります。これらの生薬は身体を温めたり、新陳代謝を亢進させる作用があります。
④温
温は熱よりも作用が弱く、温に該当する生薬には、人参(にんじん)、当帰(とうき)、桂皮(けいひ)などがあります。
⑤平
平には、冷ます作用も温める作用もない生薬が該当します。平に該当する生薬には、大棗(たいそう)、甘草(かんぞう)、茯苓(ぶくりょう)などがあります。
薬味による生薬の分類
薬味は味で生薬を分類する方法で、①酸(さん)、②苦(く)、③甘(かん)、④辛(しん)、⑤鹹(かん)、⑥淡(たん)に分類されます。通常、淡は薬味に分類されないので、淡以外の薬味を五味と分類されます。
①酸
酸はすっぱい味のことで、発汗抑制作用、止血作用、下痢を抑える作用があります。酸に該当する生薬には、呉茱萸(ごしゅゆ)、山茱萸(さんしゅゆ)、五味子(ごみし)などがあります。
②苦
苦は苦い味のことで、体内の病的な熱を冷ます作用、体内の湿を乾かす作用があります。苦に該当する生薬には、蒼朮(そうじゅつ)、黄蓮(おうれん)、大黄(だいおう)などがあります。
③甘
甘は甘い味のことで、症状を緩やかにする作用、胃腸機能を亢進する作用があります。甘に該当する生薬には、人参(にんじん)、甘草(かんぞう)、麦門冬(ばくもんどう)などがあります。
④辛
辛は辛い味のことで、気を巡らせたり、発散させる作用があります。辛に該当する生薬には、生姜(しょうきょう)、薄荷(はっか)、陳皮(ちんぴ)、紫蘇(しそ)などがあります。
⑤鹹
鹹は塩辛い味のことで、硬いものを柔らかくする作用、緩やかな瀉下作用があります。鹹に該当する生薬には、牡蛎(ぼれい)、芒硝(ぼうしょう)などがあります。
⑥淡
淡は無味で、体内の余分な水分を排出する作用があります。淡に該当する生薬には、木通(もくつう)、茯苓(ぶくりょう)、滑石(かっせき)などがあります。
五行説
五味は五行説の考えににあてはめられて、酸=木、苦=火、甘=土、辛=金、鹹=水の五行に分類されます。これら五行は、相互に影響を及ぼし合ってバランスをとっています。
五行説で互いに影響を及ぼす作用には、相生と相克があります。
相性
相生は、相手を産み育てる(相手の作用を助ける)という母子関係のことを表します。
木(=酸)→火(=苦)→土(=甘)→金(=辛)→水(=鹹)→木(=酸)の並びで、前者が後者の働きを助けます。
相克
相克は、相手を抑制する関係のことを表します。
木(=酸)→土(=苦)→水(=鹹)→火(=苦)→金(=辛)→木(=酸)の並びで、前者が後者の働きを抑制します。
五臓
また五味それぞれに、どこに作用するかという五臓というものがあり、酸は肝、苦は心、甘は脾、辛は肺、鹹は腎に対応します。尚、脾は脾臓のことではなく消化機能を表した言葉で、腎は腎臓ではなく泌尿器と生殖器を表しています。