風邪のときに使われる漢方薬はいくつかありますが、症状や証によってどの漢方薬が適しているか異なります。
実証と虚証の判断
四診の中の切診の1つである脈診をみることで、今現在の証が把握できます。急性期疾患の場合はこちらを参考にします。
脈診で脈に触れることができる場合は、体力や免疫がしっかりしている実証と判断できます。
脈になかなか触れることができなければ、体力や免疫が低下している虚証と判断できます。
三陽病と三陰病
また、風邪のような発熱性急性疾患では、病態がどの程度進行しているかを把握するために六病位に分けて考えます。六病位は病毒が体の外側から内側に入っていく考え方で、陽と陰(三陽病と三陰病)に分けられます。
三陽病は疾患に抵抗する力が保たれている期間で、自覚的に熱感を感じます。三陽病の期間では、太陽病から少陽病、陽明病と進行していきます。
太陽病では病邪は表(体の外側)にあり、発汗を促して病邪を追い払うような治療をします。
少陽病では病邪は半表半裏(表と裏の間)にあると考えます。陽明病から三陰病に進行していくと裏(体の内側)に病邪があると考えます。
陽明病では、瀉下治療をして大便として病邪を追い払うような治療を行います。
三陽病は陽証(熱証)の状態であり、熱感を伴ったり炎症があります。この時は、石膏、大黄、黄連、黄芩などで身体を冷やすような治療を行います。
三陽病が進行すると三陰病になります。三陰病では太陰病、少陰病、厥陰病と進行していきます。三陰病は体力や抵抗力が低下した状態で、太陰病以外では体力が病邪に劣っていて悪寒や手足の冷えを感じます。
この病期は陰証(寒証)の状態であり、悪寒や冷えがあります。この時は、附子や乾姜などで身体を温めるような治療をまず行います。
実証と虚証で使用する漢方薬
実証では葛根湯や麻黄湯を用います。
葛根湯は、頭痛、発熱、悪寒、肩こりなどの病邪が表にある太陽病期で自然発汗がない場合に使われます。
実証と虚証の間の虚実間証(中間証)では、小青竜湯を用います。
小青竜湯は、表証である鼻水やくしゃみ、裏証である胃部の振水音がある場合に用います。
虚証では桂枝湯や香蘇散、冷えを感じるときは麻黄附子細辛湯や真武湯を用います。
桂枝湯は、表証である発熱があり、気逆であるのぼせがあり、汗をかいている場合に用います。桂枝湯に含まれる桂皮がのぼせと汗を改善させます。
香蘇散は、表証である発熱、裏証である胃腸虚弱があり、うつ傾向がある場合に用います。香蘇散に含まれる香附子(こうぶし)と蘇葉(そよう)がうつ傾向を改善します。また、蘇葉には解熱作用もあります。
麻黄附子細辛湯は、表証である頭痛や発熱、裏証である冷えがある場合に用います。また、悪寒が強いときに用いる漢方薬です。
真武湯は、裏証である下痢や冷えなどがある場合に用います。