漢方を学ぶ

漢方における病態把握の指標:八綱②

漢方における病態を把握する指標として八綱があります。八綱には、陰陽、虚実、寒熱、表裏の概念があり、『漢方における病態把握の指標である八綱①』では、陰陽と虚実について書きました。今回は残りの寒熱と表裏について書いていきます。

寒熱

寒熱は体温のことではなく、自覚的な感覚のことを指します。温めるべきなのを冷やしてしまったり、冷やすべきなのを温めてしまうと、病態を悪化させることがあるのでこの鑑別も非常に重要です。

熱感、発熱、口渇、のぼせ、赤色尿、充血など体が熱く感じる状態を熱症、悪寒、頭痛、下痢、薄い痰、冷感など寒く感じる状態を寒証と表します。

例えば、高熱でも悪寒がするならば寒証と判断します。この場合、乾姜(かんきょう)などを含む漢方薬を使用したり、温性食物を摂ったり、衣服などで体を温めるようにします。

熱感がある場合は熱症と判断して石膏(せっこう)などを含む漢方薬を使用したり、冷たい水や風に当たるなどして体を冷やすようにします。

熱症が進行すると、口が渇いたり、火照り、冷たい水が欲しくなったりすることがあります。これは虚熱(きょねつ)あるいは真寒仮熱(しんかんかねつ)という見かけ上の熱の状態であることがあります。この場合は、全身が衰弱して脈が遅いといった著しい寒の状態を見逃さないようにし、寒証として対応しなくてはなりません。

例えば、アトピー性皮膚炎で全身が赤くなって火照っていたとしても、底冷えがする場合は、冷やす作用を持つ石膏を含む漢方薬でなく、温める漢方薬を使用します。

表裏

表裏は、病が体のどの部位にあるかを示す指標です。表は皮膚、皮下組織、関節、頭、喉、鼻、表皮から浅い部分の筋肉など、体の表面付近を指します。裏は体の内部を指し、消化管が該当します。表と裏の間の横隔膜付近を半表半裏(はんぴょうはんり)といいます。

表で起こる病を表証といい、症状としては悪寒、頭痛、発熱、鼻水、関節痛、咽頭痛、筋肉痛などがあります。

裏で起こる病を裏証といい、症状としては下痢、便秘、腹部膨満感、身体深部の熱寒などがあります。

表裏は病の場所を表すのに対して、陰陽は性質虚実は体質や病毒の過不足、寒熱は症状を表すといえます。陰陽、虚実、寒熱はそれぞれ別の指標ですが、陽と実と熱、陰と虚と寒がよく相関して現れます。