漢方を学ぶ

生薬の薬能による分類

生薬の効果は薬能といわれます『生薬の性質と味による分類』で薬性と薬味による分類について書きましたが、薬能で分類をすることもできます。今回は薬能で生薬を分類する方法について書いていきます。

薬能は、①病気の原因になる邪気を身体から除くもの、②邪気による症状を改善するもの、③気血水に関連した病態を改善するもの、④それ以外のもの、の4つに分類されます。

①病気の原因になる邪気を身体から除くもの

代表的なものに解表薬(げひょうやく)瀉下薬(しゃげやく)があります。

解表薬

解表薬は身体の表面にある邪気を除くものです。解表薬は、更に辛温(しんおん)解表薬辛涼(しんりょう)解表薬に分けられます。

辛温解表薬

辛温解表薬は、悪寒が激しく口が乾かない場合に用いられ、麻黄(まおう)桂枝(けいし)細辛(さいしん)などが該当します。

辛涼解表薬

辛涼解表薬は、発熱があり口が渇く場合に用いられ、薄荷(はっか)葛根(かっこん)牛蒡子(ごぼうし)などが該当します。

瀉下薬

瀉下薬は排便を促進して体内の余分な熱を除くものです。瀉下薬は、更に攻下薬(こうげやく)潤下薬(じゅんげやく)に分けられます。

攻下薬

攻下薬は作用が強く、大黄(だいおう)芒硝(ぼうしょう)センナなどが該当します。

潤下薬

潤下薬は便を軟らかくする作用を持ち、麻子仁(ましにん)桃仁(とうにん)杏仁(きょうにん)などが該当します。

②邪気による症状を改善するもの

邪気が身体の中にあって、解表薬では取り除くことができない場合に使われます。代表的なものに、清熱薬(せいねつやく)散寒薬(さんかんやく)があります。

清熱薬

清熱薬は熱感を伴う症状に有効で、石膏(せっこう)知母(ちも)大黄などが該当します。

散寒薬

散寒薬は冷感や寒気を伴う症状に有効で、附子(ぶし)桂皮(けいひ)乾姜(かんきょう)などが該当します。

③気血水に関連した病態を改善するもの

代表的なものに、補気薬(ほきやく)理気薬(りきやく)補血薬(ほけつやく)駆瘀血薬(くおけつやく)化湿薬(かしつやく)利水薬(りすいやく)補陰薬(ほいんやく)があります。

補気薬

補気薬は、気を補って全身の機能を高める作用を持ち、人参(にんじん)黄耆(おうぎ)山薬(さんやく)などが該当します。

理気薬

理気薬は、気の停滞を改善する作用を持ち、陳皮(ちんぴ)厚朴(こうぼく)香附子(こうぶし)などが該当します。

補血薬

補血薬は、血を補って全身の栄養状態や神経機能を改善する作用を持ち、当帰(とうき)地黄(じおう)阿膠(あきょう)などが該当します。

駆瘀血薬

駆瘀血薬は、血の停滞を改善する作用を持ち、牡丹皮(ぼたんぴ)桃仁川芎(せんきゅう)などが該当します。

化湿薬

化湿薬は、消化管の余分な水分を除く作用を持ち、厚朴半夏(はんげ)朮(じゅつ)などが該当します。

利水薬

利水薬は、利尿によって体内の余分な水分を除く作用を持ち、茯苓(ぶくりょう)猪苓(ちょれい)沢瀉(たくしゃ)などが該当します。

補陰薬

補陰薬は、水分などの不足を改善する作用を持ち、麦門冬(ばくもんどう)天門冬(てんもんどう)地黄などが該当します。

④それ以外のもの

上記に示した分類以外で、代表的なものに去風湿薬(きょふうしつやく)止咳化痰薬(しがいけたんやく)安神薬(あんしんやく)鎮痙薬(ちんけいやく)固渋薬(こじゅうやく)があります。

去風湿薬

去風湿薬は、体外の湿気による関節痛や筋肉痛を改善する作用を持ち、独活(どっかつ)などが該当します。

止咳化痰薬

止咳化痰薬は、咳や痰を改善する作用を持ち、杏仁五味子(ごみし)などが該当します。

安神薬

安神薬は、不安や不眠を改善する作用を持ち、竜骨(りゅうこつ)牡蛎(ぼれい)などが該当します。

鎮痙薬

鎮痙薬は、興奮やてんかん、ふるえを改善する作用を持ち、天麻(てんま)などが該当します。

固渋薬

固渋薬は、尿や大便などの体内のものが漏れるのを改善する作用を持ち、山茱萸(さんしゅゆ)五味子などが該当します。

このように生薬は薬能で分類することもできますが、1つの生薬でも様々な薬能を持つので、厳密に1つずつ分類することは困難といえます。